投稿者: awa-editor

  • はじめての阿波おどり観覧ガイド — 持ち物・服装・場所取り・暑さ対策

    阿波おどりは、真夏の夕方から夜にかけて、屋外で3〜4時間立ったり座ったりして観る祭りです。踊りそのものより先に、暑さと人混みで消耗してしまう——というのが、はじめての方にいちばん多い失敗だと思います。この記事では、徳島市阿波おどりと東京高円寺阿波おどりを想定して、当日を無事に楽しみきるための準備をまとめました。

    まず気温を知っておく

    気象庁の平年値(1991〜2020年の30年平均)で、8月の気温は次のとおりです。

    | | 徳島 | 東京 | | — | — | — | | 日最高気温の平均 | 32.3℃ | 31.3℃ | | 平均気温 | 28.1℃ | 26.9℃ | | 日最低気温の平均 | 24.9℃ | 23.5℃ | | 月降水量 | 193.0mm | 154.7mm |

    意外に思われるかもしれませんが、昼間の暑さは徳島と東京で1℃ほどの差しかありません。「西だから徳島のほうがずっと暑い」という感覚は、数字の上では大きくないのです。

    むしろ注意すべきは夜です。日最低気温の平年値が徳島24.9℃、東京23.5℃。これは明け方の最低値ですから、演舞が行われる18時〜22時台はもっと高い温度帯にあります。「夜になれば涼しくなるだろう」という前提で準備すると足りません。

    なお2026年の徳島市阿波おどりでは、熱中症対策として有料演舞場の第1部の入場開始が、チケット記載の17時30分から17時へと30分繰り上げられました。主催者側もこの時間帯の暑さを前提に動いている、ということです。

    熱中症対策 — 暑さ指数を前日にチェックする

    環境省は暑さ指数(WBGT)という指標を公開しており、日最高暑さ指数の予測値が31以上になると「熱中症警戒アラート」が発表されます。予測地図は前日の14時と17時、当日の5時に更新されます。出発前夜と当日朝に見ておくと、その日の危険度が数字でわかります。

    アラート発表時に環境省が呼びかけているのは、こまめな休憩と水分・塩分の補給、涼しい環境で過ごすこと、高齢者・子どもは特に注意し周囲が見守り声をかけること、です。祭りの現場に置き換えると、次のようになります。

    • 飲み物は「会場で買えばいい」と考えず、少なくとも1本は持って出る(開演前後の売店・コンビニは行列になります)
    • 水だけでなく、塩分がとれるもの(塩タブレット、スポーツドリンク)を併用する
    • 1公演ぶんずっと粘らず、途中で日陰や冷房のある場所へ避難する時間をあらかじめ組み込む
    • 体調が悪くなったら我慢しない。両大会とも会場に救護所が設けられています

    持ち物リストと服装

    必ず持っていきたいもの

    • 飲み物(凍らせたものが1本あると首や脇を冷やせます)
    • 塩分補給できるもの
    • 扇子または携帯扇風機
    • 汗ふきタオル
    • 冷却シート・冷感グッズ
    • モバイルバッテリー(写真と地図で電池を使い切ります)
    • 現金(屋台や小さな店ではキャッシュレス非対応のことがあります)
    • ゴミ袋(高円寺は「ゴミは持ち帰りが原則」と公式が案内しています)

    あると助かるもの

    • 薄手の折りたたみレインコート(傘は人混みで危険です)
    • 敷物になるもの(無料エリアで座れる場所を見つけたとき用)
    • 虫よけ
    • 絆創膏(履き慣れない靴での靴ずれ対策)

    服装

    半袖・薄手・速乾の素材で、履き慣れたスニーカーがおすすめです。ビーチサンダルや新品の靴は、人混みで踏まれたり長時間歩いたりするとつらくなります。桟敷席は座って観る時間が長いので、締め付けの少ないボトムスのほうが楽です。帽子は日中の移動時には有効ですが、演舞場では後ろの人の視界をふさぐことがあるので、着席時は外す配慮を。

    有料席と無料エリア、そして場所取りのルール

    徳島市阿波おどりには有料の演舞場(藍場浜・南内町・紺屋町)と無料の演舞場・おどり広場があります。有料演舞場は2026年の場合、第1部18時00分〜19時40分、第2部20時20分〜22時00分の入替制で、席は自由席のC席(前売1,000円)から南内町の特別観覧席(同15,000円)まで幅があります。座って観られること、正面から隊列を見られること、途中で場所を追われないことが有料席の価値です。はじめての方は「有料演舞場で1公演をきちんと観て、その前後に無料エリアを歩く」という組み方が失敗しにくいと思います。

    東京高円寺阿波おどりには、一般販売される有料観覧席がありません。特別桟敷席は協会への協賛に対する返礼として提供されるもので、通常のチケットとしては買えません。つまり高円寺は基本的に立ち見です。そのぶん、屋内の舞台公演(座・高円寺/セシオン杉並、各1公演2,500円・全席指定)を昼のうちに観ておく、という組み立てが有効です。

    場所取りについて、高円寺の公式は明確に禁止しています。道路上や縁石にテープを貼っての場所取りは禁止で、当日貼られたテープは関係者が剥がします。店舗の営業を妨げる位置での観覧も控えるよう求められています。良い場所は「早めに行って立って待つ」しかありません。

    無料エリアで観る場合の現実的なコツは、最前列にこだわらないことです。演舞場は一本道ですから、少し後ろでも、踊り子が近づいてくる時間帯は必ずあります。また、演舞場の「出発地点」付近は、これから踊り出す連を間近で見られます。高円寺の公式のよくある質問も、子どもが見やすい場所として純情演舞場・パル演舞場の出発地点、ルック第二演舞場を挙げています(例年の傾向として)。

    子ども連れ・車椅子で観るとき

    高円寺の公式は「自転車及びベビーカーでのご来場はお控えください」と案内しています。人ごみのなかでは危険だからです。小さなお子さん連れの場合、抱っこ紐に切り替えるか、屋内の舞台公演を選ぶほうが安全です。舞台公演は3歳未満なら保護者の膝上で無料(座席が不要な場合)とされています。

    車椅子での観覧については、徳島・高円寺いずれの公式サイトにも明確な案内を見つけられませんでした。徳島は阿波おどり未来へつなぐ実行委員会事務局(088-678-5181)、高円寺は東京高円寺阿波おどり振興協会へ事前に問い合わせるのが確実です。屋内会場(アスティとくしま、あわぎんホール、座・高円寺、セシオン杉並)は一般的なホール設備を備えているため、屋外の演舞場よりも相談しやすいと考えられます。

    雨のとき

    高円寺の公式は「よほどの強雨でない限り、決行します」としています。ただし特別観覧席は、雨天中止となった場合でも払い戻しはないと明記されています。

    徳島の有料演舞場について、荒天時の中止判断や払い戻しの規定は、公式サイト上で確認できませんでした。チケット購入時の規約と、当日の公式サイト・SNSでの発表を確認してください。いずれにせよ、傘は人混みでは危険です。フード付きのレインコートやポンチョを用意しておくのが正解です。

    写真撮影のマナー

    高円寺は公式がはっきりルールを定めています。演舞場内に入っての撮影は禁止。三脚・一脚・脚立・椅子・自撮り棒・ドローンなど、機材を使った撮影も禁止です。

    徳島の阿波おどり公式サイトも2026年に「一般の個人カメラマン・撮影者の皆さまへのお願い」を公開し、屋外の演舞場および屋内会場(アスティとくしま、あわぎんホール)での撮影ルールを定めています。内容は公式ページでご確認ください。

    共通して言えるのは、機材を広げて他のお客さんの視界や通行をふさがないこと、そしてフラッシュを踊り子に向けないことです。踊り子はこの5日間(あるいは2日間)のために練習を重ねてきています。撮ることが目的化して、周りの人が観られなくなるのは本末転倒です。

    桟敷での過ごし方と、帰りの足

    有料演舞場の桟敷席は、段状に組まれた席に並んで座る形式です。隣との間隔は広くありません。荷物は足元にまとめ、通路をふさがないようにしましょう。徳島の有料演舞場は入替制なので、第1部が終わったら退場が必要です。第2部まで観たい場合は、それぞれのチケットが要ります。

    終演後は、いっせいに人が動きます。高円寺は交通規制が両日とも午後4時10分から午後8時30分まで敷かれ、規制中は駅南口のタクシー・バス乗り場が使えず、北口の臨時乗り場を利用することになります。さらに、開催日の土日はJR中央線快速電車が高円寺駅に停車しません。新宿方面へ帰る場合は各駅停車に乗るか、中野駅まで歩くほうが早いこともあります。

    徳島も市街地に交通規制が敷かれ、市営・県営駐車場は規制時間内は入庫できません(出庫は可能)。マリンターミナル駐車場のシャトルバスは22時45分まで運行されています。22時終演のあと、駅もタクシーも混みます。終電・最終バスの時刻は、行く前に必ず確認しておいてください。

    急いで帰ろうとすると、いちばん暑くていちばん混んでいる時間に人の波に飲まれます。近くの店で30分休んでから動く、というのも立派な作戦です。

  • 東京高円寺阿波おどり 完全ガイド

    徳島の阿波おどりが8月半ばに終わったあと、東京・高円寺の街に阿波おどりがやってきます。2026年で第67回。主催者発表で前年は2日間に102万人が訪れた、国内屈指の規模の祭りです。はじめて観に行く方に向けて、開催概要・演舞場の構成・観覧場所の選び方・舞台公演・アクセスを、公式発表にもとづいて整理しました。

    「高円寺ばか踊り」から始まった

    高円寺の阿波おどりが始まったのは1957年(昭和32年)8月27日。杉並区の記録によれば、当初の名前は「阿波おどり」ではなく「高円寺ばか踊り」でした。徳島の郷土芸能というより、まずは「地域のにぎわいをつくる催し」として生まれたのです。

    きっかけとして語られているのは、隣町・阿佐ヶ谷の七夕まつりです。戦後の焼け跡から街が立ち直りつつあった時期に、商店街の青年部が「うちも負けずに何かやろう」と考えた。神輿を出す案は資金が足りず、盆踊りをするにも高円寺の道は狭く傾斜がある。そこで浮かんだのが「歩きながら踊る」阿波おどりだった——という経緯が広く紹介されています。

    その後、都内に住む徳島県出身者の指導を受けながら本格化し、1963年(昭和38年)に正式に「東京高円寺阿波おどり」を名乗るようになりました。2005年(平成17年)には運営母体がNPO法人化しています。町おこしの手作り企画が、60年以上をかけて100万人規模の祭りに育った、という順序です。

    2026年の開催概要

    第67回東京高円寺阿波おどりは、2026年8月29日(土)・30日(日)の2日間、いずれも午後5時から午後8時までの開催です。会期は例年、8月の最終土日にあたります。

    主催は第67回東京高円寺阿波おどり実行委員会と特定非営利活動法人 東京高円寺阿波おどり振興協会、共催は杉並区。公式発表によれば前年実績はのべ158連の参加、観客動員は102万人です。

    ここで一度、徳島と並べてみると規模感がつかめます。徳島市阿波おどりは5日間で約111万人(2025年)。高円寺は2日間で102万人です。1日あたりで見れば、高円寺のほうがはるかに人口密度の高い祭りだということになります(発表方法や集計の考え方は主催者ごとに異なるため、単純比較には注意が必要です)。狭い商店街に人が詰まる、という高円寺の体感は、この数字からも説明がつきます。

    8つの演舞場

    会場はJR高円寺駅・東京メトロ丸ノ内線新高円寺駅の周辺商店街と高南通り。2026年は次の8つの演舞場が設けられます。

    • 中央演舞場
    • ひがし演舞場
    • 純情演舞場
    • パル演舞場
    • 桃園演舞場
    • みなみ演舞場
    • ルック第一演舞場
    • ルック第二演舞場

    名前のいくつかは商店街の名称に由来します。「パル」は高円寺パル商店街、「ルック」はその南に続くルック商店街、「純情」は高円寺純情商店街です。つまり演舞場とは、専用の会場ではなく、ふだんの買い物道路をそのまま舞台にしたものです。徳島のように河川敷や大通りに大規模な桟敷が組まれるのとは、風景がかなり違います。

    「連」という単位で観ると面白くなる

    阿波おどりは「連(れん)」と呼ばれる踊りのグループ単位で演舞します。高円寺には高円寺阿波おどり連協会に所属する地元の連があり、そこに都内近郊などの連が加わって、前年実績でのべ158連が街を踊り歩きます。

    はじめて観るとどの連も同じに見えるかもしれませんが、実際には連ごとに衣装の色、鳴り物(笛・鉦・太鼓・三味線)の編成、隊列の組み方、踊りの雰囲気がまったく違います。編み笠を深くかぶった女おどり、腰を落として前へ進む男おどり、子どもたちのおどり——同じ場所に立っていても、連が変わるたびに空気が入れ替わります。

    公式サイトには参加連の紹介ページと当日の運行表があり、「どの連が、どの演舞場を通るか」を調べられます。お目当ての連が決まっている方は、事前に運行表を確認してから場所を決めるとよいでしょう。決まっていない方も、2〜3連続けて観ているうちに、自然と好みが出てきます。

    観覧場所の選び方と混雑

    高円寺の演舞場は基本的に立ち見です。有料の一般観覧席は販売されていません。特別桟敷席はありますが、これは協会の活動を支援した方への返礼として提供されるもので、通常のチケット販売ではない点に注意してください(協賛は1口15,000円で中央演舞場の入場券1枚、1口10,000円で純情・桃園・みなみのいずれかの入場券1枚。1人5口まで、雨天中止の場合も払い戻しなしと案内されています)。

    場所取りについて、公式は明確です。道路上や縁石にテープを貼っての場所取りは禁止で、当日貼られたテープは関係者が剥がします。店舗の営業を妨げる位置での観覧も控えるよう求められています。

    小さなお子さん連れの方には、公式のよくある質問が「純情演舞場・パル演舞場の出発地点、ルック第二演舞場が比較的見やすい」(例年の傾向として)と案内しています。ひとつの目安になると思います。

    そのほか公式が案内している主なルールは以下のとおりです。

    • 当日の飛び入り連はありません。演舞中の連に飛び入りすることも禁止です。
    • 演舞場内に入っての撮影は禁止。三脚・一脚・脚立・椅子・自撮り棒・ドローンなど機材を使った撮影も禁止です。
    • 自転車・ベビーカーでの来場は、人ごみで危険なため控えるよう求められています。
    • ゴミは持ち帰りが原則。路上禁煙地域のため、喫煙は指定の場所で。
    • 商店街での買い物は、大混雑になる前の開始前に済ませておくことがすすめられています。
    • 雨天は「よほどの強雨でない限り、決行します」とされています。
    • 気分が悪くなったら各救護所へ。無理をせずスタッフに声をかけてください。

    舞台で観るという選択肢——座・高円寺とセシオン杉並

    街の流し踊りは17時からですが、その前の時間帯に、屋内ホールで阿波おどりを観る公演があります。冷房の効いた客席で、全席指定です。混雑と暑さが不安な方には、こちらを軸に組み立てるという手があります。

    夏の座・高円寺舞台阿波おどりは、8月29日・30日に座・高円寺1(杉並区高円寺北2-1-2)で開催。第一部は開場11時・開演11時30分、第二部は開場13時30分・開演14時。料金は1公演2,500円(税込)の全席指定で、障害者手帳をお持ちの方は500円割引、3歳未満は座席不要であれば保護者の膝上で無料です。両日で計12団体が出演します。当日券の販売はありません。

    夏のセシオン舞台阿波おどりは、同じ日程でセシオン杉並ホール(杉並区梅里1-22-32)にて。時間・料金は座・高円寺と同じく第一部11時30分開演、第二部14時開演、1公演2,500円(税込)の全席指定です。

    いずれも会場は演舞場エリアから歩ける範囲にあります。昼は舞台、夕方から街——という一日の組み立てが可能です。

    アクセスと交通規制

    最寄りはJR中央・総武線各駅停車の高円寺駅(徒歩5分)と、東京メトロ丸ノ内線の新高円寺駅(徒歩5分)です。ほかに東高円寺駅から徒歩12分、阿佐ケ谷駅・中野駅から徒歩15分、南阿佐ケ谷駅から徒歩20分。

    ひとつ重要な注意があります。公式が明記しているとおり、8月29日(土)・30日(日)はJR中央線快速電車が高円寺駅に停車しません。新宿方面から向かう場合は、中野駅などで各駅停車に乗り換える必要があります。帰りも同様です。

    交通規制は両日とも午後4時10分から午後8時30分まで。青梅街道・環状七号線・早稲田通り・馬橋通りに囲まれた高円寺南・北の区域で、一般車両は進入・通行できません。会場周辺は大変混雑するため、公式も公共交通機関の利用を求めています。規制中は駅南口のタクシー・バス乗り場が使えず、北口の臨時乗り場を利用することになります。終演直後の駅とタクシー乗り場は当然混みますので、少し時間をずらすか、一駅歩くくらいの余裕を見ておくと楽です。

    パンフレットは事前に駅・商店街・郵便局・座・高円寺などで、当日は駅・総合案内所・座・高円寺で配布されます。運行表が載っているので、着いたらまず1部手に入れておくと動きやすくなります。

  • 徳島市阿波おどり 完全ガイド(2026年版)

    はじめて徳島の阿波おどりを観に行く方に向けて、2026年の会期・会場・チケット・アクセスを、公式発表にもとづいて整理しました。料金と時刻はすべて「2026年の公式発表」から引いています。年が変われば内容も変わりますので、お出かけ前にはかならず公式サイトで最新情報をご確認ください。

    2026年の会期は8月11日から15日まで

    2026年の徳島市阿波おどりは、8月11日(火・祝)から15日(土)までの5日間です。ただし5日間ずっと同じことをしているわけではありません。初日の11日は屋内ホールでの公演のみ、街なかの演舞場が動くのは12日から15日の4日間です。ここを勘違いすると「11日に行ったのに街で踊っていない」ということになりかねません。

    もうひとつ、はじめての方がとまどいやすいのが名称です。かつての「前夜祭」は「匠の舞台 優りび」、「選抜阿波おどり」は「夢の舞台 祭りび」という名前に変わっています。古い記事を読んでいると旧名称で書かれていることが多いので、公式の呼び名とあわせて覚えておくと迷いません。

    なお2025年の人出は、主催の阿波おどり未来へつなぐ実行委員会の発表で約111万人。前年(約102万人)から1割近く増えています。街の混み具合は、その規模を思い浮かべておくとイメージしやすいと思います。

    8月11日「匠の舞台 優りび」(アスティとくしま)

    初日はアスティとくしまでの屋内公演です。第一部12時、第二部15時30分、第三部19時の3回で、各回およそ80分。冷房の効いたホールで座って観られるので、暑さが心配な方や小さなお子さん連れの方には入り口としてすすめやすい公演です。

    席種と料金(2026年の前売・税込)は、特別指定席5,000円、S席3,800円、A席2,800円です。

    8月12日〜15日 街の有料演舞場

    12日から15日の夜は、街なかに設けられた3つの有料演舞場が主役になります。

    • Sansan藍場浜演舞場
    • あわぎん南内町演舞場
    • 株式会社バル 紺屋町演舞場

    いずれも第1部が18時00分〜19時40分、第2部が20時20分〜22時00分の「二部入替制」です。1枚のチケットで観られるのはどちらか一方の部だけで、部と部のあいだに客席の入れ替えがあります。

    席種と料金(2026年の前売・税込)は次のとおりです。

    | 席種 | 料金 | | — | — | | 南内町演舞場 特別観覧席(指定) | 15,000円 | | SS席(指定) | 6,000円 | | S席(指定) | 3,000円 | | A席(指定) | 2,500円 | | B席(指定) | 2,000円 | | C席(自由) | 1,000円 |

    特別観覧席は南内町演舞場だけに設定されている最上位の席です。C席は自由席で、いちばん手が届きやすい価格帯になっています。

    チケットは、6月13日(土)正午から6月21日(日)23時59分までがWEB先行販売、7月1日(水)10時から一般販売という流れでした。販売はチケットぴあと阿波おどり公式サイトが中心で、セブン‐イレブン店内のマルチコピー機でも購入できると案内されています。2026年については、この記事の公開時点ですでに一般販売が始まっています。

    なお2026年は熱中症対策として、有料演舞場の第1部の入場開始時刻が、チケット記載の17時30分から30分繰り上げて17時からに変更されています。早めに入って席で落ち着きたい方には助かる変更です。

    「夢の舞台 祭りび」(あわぎんホール)

    12日から15日の昼間は、あわぎんホールで「夢の舞台 祭りび」が上演されます。第一部11時、第二部13時30分、第三部16時の3回で、各回およそ70分です。料金(2026年の前売・税込)はSS席4,500円、S席3,500円、A席2,800円。

    昼はホールで有名連をじっくり観て、夜は街の演舞場へ出る——という組み立てができるのが、この祭りの面白いところです。日中の屋外で消耗せずに済むという意味でも、現実的な回り方だと思います。

    無料演舞場とおどり広場

    チケットがなくても阿波おどりは観られます。2026年の無料演舞場は「からあげクン 両国本町演舞場」と「新町橋 Uber|電脳交通 演舞場」の2か所で、公式スケジュールでは18時10分から22時までとされています。あわせて新町橋東・両国橋南の「おどり広場」が18時から22時まで。出演連の募集案内では、このほかにアミコドーム(15時〜19時)、シビックセンターさくらホール(14時〜17時)、あわわ富街おどり広場(17時〜21時)も対象に挙げられています。

    無料エリアは立ち見が基本で、良い位置は早い時間から埋まります。「有料演舞場で1公演をしっかり観て、その前後に無料エリアを歩く」という組み合わせが、はじめての方にはいちばん失敗が少ないはずです。

    アクセス・交通規制・駐車場

    演舞場とあわぎんホールは、JR徳島駅から徒歩でおよそ5〜15分の範囲にあります。初日会場のアスティとくしまだけは離れていて、徳島市営バス山城線「徳島文理大学前」から徒歩5分です。空港からは徳島阿波おどり空港とJR徳島駅前を結ぶバスがありますが、所要時間・運賃は各社の時刻表でご確認ください。

    会期中は市街地に交通規制が敷かれます。公式サイトが交通規制区域のマップを公開していますので、車で向かう方は事前に確認してください。駐車場は予約制のものが1台1回2,000円(自動二輪500円)。臨時駐車場は内町小学校350台、富田中央公園126台。マリンターミナル駐車場は531台でシャトルバスが運行され、料金は1人1回300円(小学生以上)、運行は16時から22時45分です。市営・県営の駐車場は交通規制区域内にあるため、規制時間内は入庫できません(出庫は可能)と案内されています。

    はじめての一日は、こう組み立てる

    情報が多いので、時間の流れにそって整理しておきます(8月12日〜15日のいずれかに行く想定です)。

    昼のうちに徳島駅に着いたら、まず荷物を預けて身軽になりましょう。夕方の街は人と熱気でいっぱいになるので、大きな荷物は持ち歩かないほうが賢明です。時間に余裕があれば、11時・13時30分・16時のいずれかの回で「夢の舞台 祭りび」を観ておくと、有名連の踊りを冷房の効いたホールでじっくり見られます。夜に街で観るときの「見方の基準」ができるので、はじめての方にはとくに効果的です。

    17時になったら有料演舞場へ。2026年は熱中症対策で第1部の入場開始が17時からに繰り上げられました。日が傾いてくる時間ですが、まだ十分に暑いので、飲み物を確保してから席に着いてください。第1部は18時00分から19時40分。終わったら入替のため一度退場します。

    そのあとは無料演舞場やおどり広場へ。18時10分から22時まで、両国本町と新町橋で踊りが続いています。ここは立ち見なので、疲れていたら屋台をのぞきながら歩くだけでも雰囲気が味わえます。第2部(20時20分〜22時00分)のチケットを別に持っている方は、時間に余裕をもって会場へ戻ってください。

    22時に街の演舞が終わると、いっせいに人が動き出します。駅もタクシーも混みますので、帰りの交通手段の最終時刻は、行く前に必ず確認しておいてください。

    宿泊と持ち物のこと

    会期中の徳島市内の宿は、例年きわめて取りにくくなります。日程が決まったら宿を先に押さえるのが鉄則です。市内が満室なら、鳴門や松茂、あるいは高松・神戸方面から通うという選択肢もあります。

    服装と持ち物については、別記事「はじめての阿波おどり観覧ガイド」で気温データとあわせて詳しくまとめています。徳島の8月は日最高気温の平年値が32.3℃、夜になっても日最低気温の平年値が24.9℃です。夜だから涼しい、とは考えないほうが安全です。

    祭りのない時期に徳島を訪れる方には、阿波おどり会館のホール公演もあります(昼のおどりは11時からの回など、夜のおどりは20時〜20時50分)。会期中の運営は通常と異なる場合がありますので、公式サイトでご確認ください。

  • 踊りの見方 — 男踊り・女踊り・鳴り物の基礎

    阿波おどりの踊りは、大きく男踊り・女踊り・子ども踊りに分かれ、そこに楽器隊の「鳴り物(なりもの)」が加わります。この記事では、それぞれの見どころを順に紹介します。

    男踊り — 腰を落として、足先を外へ

    まず男踊りです。

    観光庁のホームページによれば、阿波おどりの基本的な踊りのステップは男女で同じですが、二つの異なるスタイルがあります。そのうち男踊りは、膝と足を外側に向けて、低い姿勢をとるのが特徴です。衣装は法被(はっぴ)、つまりお祭りで着る短いコートを着るのが一般的です。

    腰を落としたまま前へ進み続けるのは、見た目以上に体力を使います。手にはうちわや扇子を持つことが多く、そのさばき方も連ごとに違います。徳島県阿波踊り協会のホームページには、うきよ連の「巧みな団扇さばきの男踊り」、菊水連の「鐘と大太鼓に合わせて、2枚うちわで蝶のように舞い」といった各連自身の説明が並んでいます。

    一部の連には、自由で動きの大きい男踊りがあります。ゑびす連は「自由奔放でコミカルな暴れ踊り」を、藝茶楽は連名物の奴凧(やっこだこ)踊り「黒龍奴」を挙げています。観光庁のホームページにも、「凧踊り」と呼ばれるフリースタイルの踊り方があり、一人の男性がアクロバティックな演出を披露する、と記されています。派手な見せ場が来たら、そこが連の看板芸だと思ってよいでしょう。

    女踊り — 下駄の「前」だけで立ちます

    女踊りは、まったく別の美しさです。

    観光庁のホームページによれば、女踊りは通常、下駄(木製のサンダル)の前面でバランスを取り、手を高く持ち上げながら、しっかりとした形で踊ります。衣装はカラフルな着物と、半月形をした編みこみの笠、「編笠(あみがさ)」です。

    ここは、ぜひ足元を見てください。下駄の前の部分だけで立ち、その状態で列を組んだまま進み続ける。つま先立ちで行進しているのに近い動きです。編笠を深くかぶるため踊り子の視界は狭く、それでも隊列が揃うのは、練習量と、鳴り物のリズムに全員が乗っているからです。

    女踊りは「集団の美」で見せるパートでもあります。藝茶楽は「基本に忠実に、しなやかかつメリハリの効いた集団美」を、うずき連は「優雅でしなやかな差し足の女踊り」を、それぞれ自らの特徴として挙げています。

    さらに、法被を着て踊る「女ハッピ踊り」を持つ連もあります。ゑびす連は「見る人をハッとさせる粋でキレのある女ハッピ踊り」、うきよ連は「一糸乱れぬ演出で観客を魅了する女ハッピ踊り」と紹介しています。

    子ども踊りと、変わっていく踊り方

    子どもの姿を見かけたら、それも祭りの歴史の一部です。

    観光庁のホームページは、「子どもたちは1970年代から、阿波おどりに参加し、大人と一緒に踊りを披露してきました」と記しています。400年といわれる歴史のなかでは、比較的新しい要素です。

    連によっては「ちびっこ踊り」として独立したパートを持ちます。阿波扇は男踊り・女踊り・法被踊り・ちびっこ踊りの4パート編成、菊水連は1991年(平成3年)にちびっこの女踊り「小菊ちゃん」、1998年(平成10年)にちびっこの男踊り「小菊くん」を結成した、と紹介しています。

    踊り方の幅も広がっています。観光庁のホームページは「近年では、一部の女性は伝統的な男性のスタイルと衣装を取り入れています」と記しています。男踊り=男性、女踊り=女性という固定した区分ではなくなってきているということです。

    鳴り物 — 五種類の音が重なっている

    踊りに目を奪われがちですが、阿波おどりの体験を決めているのは音です。

    徳島県のホームページは、鳴り物には「三味線をはじめ大太鼓、締太鼓、鉦、笛、鼓などが用いられます」と記しています。観光庁のホームページは、鳴り物には大太鼓・締太鼓・横笛・三味線・鉦などが含まれ、テンポを合わせる役割を担うとしています。

    それぞれの位置づけを、確認できた範囲で整理します。

    鉦(かね) — 手に持って打つ金属の打楽器です。観光庁のホームページは、鉦がテンポを合わせる役割を担うと記しています。音が高く鋭く、雑踏のなかでも一番よく通ります。

    大太鼓(おおだいこ) — 抱えて打つ大きな太鼓で、音の土台をつくります。腹に響く低音です。

    締太鼓(しめだいこ) — 大太鼓より小さく高い音の太鼓で、細かいリズムを刻みます。

    篠笛(しのぶえ) — 横笛です。旋律を担当します。神戸大学の研究紀要に掲載された論文では、阿波おどりの囃子は篠笛・鉦・太鼓・三味線などで構成され、篠笛を演奏する人数は年々増えていると指摘されています。同じ論文はまた、阿波おどりの囃子は三味線が普及した近世に確立されたと考えられる、とも述べています。

    三味線(しゃみせん) — 弦楽器です。歌(よしこの)と密接に結びついています。

    連ごとの個性は、鳴り物にもっとも表れます。徳島県阿波踊り協会のホームページには、酔狂連の「三味線(ぞめき)巡礼唄」、うきよ連の演舞の途中で笛を奏でる名物「うきよ笛」、藝茶楽の「踊りの場面に合わせて巧みに打ち分け、多彩な音色を奏でる鳴り物」といった記述が並びます。菊水連にいたっては「ゆっくりとしたぞめきではなく、アップテンポの新しいリズムを作り結成しました」と、リズムそのものを結成理由に挙げています。

    「ぞめき」「よしこの」と、掛け声

    阿波おどりを語るうえで欠かせない言葉が二つあります。

    ぞめきとは、徳島県のホームページによれば「阿波おどり特有の二拍子の軽快で陽気なリズム」のことです。観光庁のホームページも、鳴り物が「ダブルタイム(二拍子)で躍動感のある音楽」を提供する、と記しています。あの、体を前へ押し出してくるような二拍子が「ぞめき」です。

    よしこのは、徳島県のホームページによれば「江戸時代後期に流行した民謡で、藍商人が京、大阪方面から阿波に持ち帰ったと言います」。つまり、阿波おどりの代表的な歌は、もともと徳島の外から来た流行歌だったということになります。1931年(昭和6年)には、芸者で歌手の多田小餘綾(1907〜2008年)が「阿波よしこの」をヒットさせ、阿波おどりの普及に貢献したと観光庁のホームページは記しています。

    そしてこの「阿波よしこの」のなかの一節が、阿波おどりでもっとも有名な言葉です。

    踊る阿呆に見る阿呆 同じ阿呆なら踊らにゃ損々

    観光庁のホームページは、この歌詞に阿波おどりの精神がもっともよく表れている、としています。

    もうひとつ、「正調(せいちょう)」という言葉も覚えておくと役に立ちます。徳島県のホームページによれば「正しく受け継がれてきた(唄い方などの)調子」のことで、連の紹介文に頻繁に登場します。

    掛け声は「合図」として聴く

    踊っている最中、踊り子たちが声を掛け合います。

    徳島県のホームページは、「ヤットサー」を「踊りの始まりや途中の掛声の一つ」と説明しています。「一つ」という書き方のとおり、掛け声は一種類ではなく、連によっても場面によっても変わります。

    掛け声は「合図」として聴いてください。連の隊形が変わるとき、見せ場が始まるときに、たいてい声が入ります。声が上がったら、次の数十秒が見どころです。

    ここを見ると、面白い

    初めて見る方に、具体的な着眼点を五つ挙げておきます。

    1. 鉦だけを聴いてみる。 全部の音を追うと混ざって聴こえますが、鉦だけに耳を集中すると、その連のテンポの骨格が分かります。連が変わるとテンポも変わるので、比べてみてください。

    2. 女踊りの足元を見る。 下駄の前だけで立って進んでいることを確認すると、あの優雅さがどれほどの身体能力の上に成り立っているかが分かります。

    3. 提灯の名前をメモして、連ごとの違いを比べる。 ゆったりした「正調」を守る連と、アップテンポの連では、同じ祭りとは思えないほど印象が違います。

    4. 鳴り物の担当者を見る。 踊り子だけでなく、太鼓や笛の奏者に目を向けると、踊り子と呼吸を合わせている瞬間が見えることがあります。

    5. 朝と昼の「流し」を狙う。 徳島県のホームページは「流し」を「朝から昼にかけて、三味線などの鳴り物だけで町筋を流して歩くこと」と説明しています。夜の演舞場とはまったく違う、静かな阿波おどりです。夜だけがすべてではありません。

  • 連とは何か — 有名連・協会・その違い

    阿波おどりはチームで踊ります

    阿波おどりを初めて見る方が最初に戸惑うのが、「連(れん)」という言葉かもしれません。

    徳島県のホームページは、連を「阿波おどりを踊る団体、グループのこと」と定義しています。伝統ある有名連や企業連、学生連など多種多様で、総数は1,000を超えるとされています。

    大事なのは、連は「踊る人の集まり」だけではないということです。ひとつの連は、先頭で連名の入った提灯を掲げる人、男踊りの人、女踊りの人、子ども踊りの人、そして三味線や太鼓を担当する「鳴り物(なりもの)」の人たちで構成されます。つまり、演奏隊と踊り子がセットになった、ひとつの舞台集団なのです。

    観光庁のホームページによれば、徳島市の阿波おどりには毎年約800の連が出場し、技量のレベルもさまざまです。家族の連、職場の同僚の連、大学生の連などがあると記されています。

    だから阿波おどりは、ひとつの巨大な集団舞踊ではなく、800近い個性のパレードとして見るのが正しいのです。

    「有名連」は、人気投票ではありません

    阿波おどりを調べていると必ず出てくるのが「有名連(ゆうめいれん)」という言葉です。技術の高い、格の違う連——というイメージを持たれると思いますが、実はこの言葉には、はっきりした組織上の定義があります。

    徳島市の阿波おどり会館のホームページには、こう書かれています。

    有名連とは、阿波おどり振興協会、徳島県阿波踊り協会に加盟する阿波おどり連のこと

    つまり「有名連」とは、二つの協会のどちらかに加盟しているかどうかという、加盟関係による区分なのです。人気ランキングでも、審査で選ばれる称号でもありません。ここを知っておくと、阿波おどりの世界の見取り図がぐっと分かりやすくなります。

    阿波おどり振興協会のホームページも、「世界でおよそ千あると言われている阿波おどり連のなかで、阿波おどりの本場・徳島には、『有名連』と呼ばれる、特に技術の優れた連があります」と説明しています。

    では、その二つの協会とはどういう団体なのでしょうか。

    一般社団法人 阿波おどり振興協会 — 1955年結成の15連

    ひとつめが、一般社団法人阿波おどり振興協会です。

    同協会のホームページによれば、阿波おどりの保存と伝承を目的に1955年(昭和30年)に結成され、現在は有名連15連が所属しています。代表理事は阿呆連連長の立川真千氏。事務所は徳島市伊月町にあります。

    所属する15連は次のとおりです(かっこ内はホームページに記載の設立年)。

    のんき連(1925年)/天水連(1946年)/阿呆連(1948年)/水玉連(1946年)/新ばし連(1950年)/天保連(1947年)/扇連(1967年)/浮助連(1946年)/阿波鳴連(1959年)/さゝ連(1960年)/若獅子連(1973年)/阿波連(1957年)/無双連(1976年)/葉月連(1978年)/よしこの連(1952年)

    この設立年の並びを眺めると、面白いことに気づきます。15連のうち9連が1946年から1952年、つまり終戦直後の数年間に集中して生まれているのです。阿波おどりが1946年に復活したことを考えると、この時期に「連」という組織の形が一気に立ち上がったことがうかがえます。ちなみに最も古いのんき連は1925年(大正14年)の設立です。

    この協会が果たした役割としてもうひとつ挙げておきたいのが「総踊り」です。同協会のホームページによれば、1,700人以上が一斉に踊り、いまや阿波おどりの代名詞となっている総踊りは、昭和47年(1972年)に阿波おどり振興協会が考案したものです。

    近年の活動も国内にとどまりません。同協会の出演実績によれば、2026年度はアメリカ・ニューヨーク(5月)、フランス・パリ(6月)での公演が予定され、あわせて徳島県内の小学校での座学・実技のアウトリーチ活動も行われています。

    徳島県阿波踊り協会 — 1969年結成、県内全域をカバー

    もうひとつが、徳島県阿波踊り協会です。

    同協会のホームページには、こう書かれています。

    徳島県阿波踊り協会は、1969年12月、徳島県内全域の53連が集い、郷土芸能としての阿波踊りの発展と振興を目指して誕生しました。

    こちらは名前のとおり「徳島県」を単位とする団体で、ホームページの所属連紹介は、徳島・小松島・阿南・海部・鳴門板野・阿波吉野川・美馬・三好という8つの支部に分けて所属連を掲載しています。50を超える連が掲載されており、県内の広い範囲をカバーする構成です。

    所属連には、娯茶平(1946年創立)、うきよ連(1948年創立)、ゑびす連(1948年創立)、酔狂連(1953年創立)、うずき連(1957年創立)、独楽連(1961年創立)、葵連(1966年創立)、新のんき連(1968年創立)、菊水連(1971年創立)、藝茶楽(1975年創立)、阿波扇(1991年創立)などがあります。

    なお同協会の事務局は、徳島市中徳島町にある徳島新聞社の事業部内に置かれています(ホームページの連絡先表記による)。徳島の阿波おどりと地元紙の関係の深さがうかがえる一点です。

    二つの協会は、何が違うのでしょうか

    ここまでを整理すると、違いは主に三点にまとまります。

    結成の時期が、振興協会は1955年、県協会は1969年12月と、14年ほど離れています。

    カバーする範囲が、振興協会は所属15連という少数精鋭の構成であるのに対し、県協会は「徳島県内全域」を掲げ、8支部に分かれた広域構成です。

    掲げる目的の言い回しも異なります。振興協会は「阿波おどりの保存と伝承」、県協会は「郷土芸能としての阿波踊りの発展と振興」です。保存・伝承に軸足を置く表現と、郷土芸能としての発展に軸足を置く表現、と読むこともできます。

    どちらが上ということではありません。表記の揺れも興味深いところで、振興協会は「阿波おどり」、県協会は「阿波踊り」と、団体名の表記そのものが違います。

    観覧する側にとって実際的なのは、阿波おどり会館の夜公演では、この両協会に所属する有名連が毎日交代で1連ずつ出演するということです(阿波おどり会館のホームページによる)。8月の本番以外の時期でも、有名連の踊りを間近に見られる仕組みになっています。

    企業連・大学連・地域連 — 有名連の外側にある広がり

    連は有名連だけではありません。むしろ数の上では、それ以外の連が圧倒的多数です。

    企業連は、企業がつくる連です。近年は徳島県外の企業も参加しています。阿波おどり未来へつなぐ実行委員会のホームページによれば、株式会社ローソンは2018年の初参加から通算5回目の企業連参加となっています。

    大学連・学生連は、大学のサークルなどが母体の連です。徳島県のホームページは連の種類として「学生連」を挙げ、観光庁のホームページも連の例として「大学生のグループ」を挙げています。

    地域連は、町内や地域を単位とする連です。神戸大学の研究紀要に掲載された論文(松村美穂・岩井正浩「阿波おどりの囃子における笛の役割に関する研究」2003年)は、阿波おどりが昔は「町内や地域ごとの連に参加して楽しむという地域性の強い祭り」だったが、現在では町内や地域という枠組の意識や神事性が薄れ、徳島県民でなくても連を作って誰もが参加できる仕組みになっている、と指摘しています。

    つまり連という単位は、地縁の共同体から出発して、いまでは会社・学校・趣味の仲間へと開かれた「参加のかたち」になっている、ということです。

    誰でも入れる「にわか連」

    そして、連の裾野のいちばん外側にあるのが「にわか連」です。

    観光庁のホームページは、「阿波踊りは民族舞踊であり、誰でも参加できます。ある時間帯では、皆誰もが踊りに参加できる『にわか連(ドロップインチーム)』もあります」と説明しています。祭りの期間中、決まった時間・場所で、観客がその場で列に加わって踊れる仕組みです。

    徳島市が公開している報告書でも、にわか連事業は「阿波おどりの普及・振興のため」の事業として、市の補助金の交付対象候補に挙げられています。行政の側も、にわか連を観光サービスではなく普及策として位置づけていることが分かります。

    連の名前を覚えると、祭りが変わります

    最後に、観覧するときの実用的なコツをひとつ。

    演舞場に連が入ってくると、先頭で連名の入った「高張提灯(たかはりちょうちん)」が掲げられます。まずそれを読んでください。そして、その連の踊りとリズムを覚えます。

    というのも、連ごとに音も所作もはっきり違うからです。たとえば徳島県阿波踊り協会の所属連紹介ページには、娯茶平の踊りは「娯茶平調」と呼ばれる独自のスタイルで男踊りの「網打ち」などを守っていること、菊水連は「ゆっくりとしたぞめきではなく、アップテンポの新しいリズムを作り結成」されたこと、うずき連は「ややゆったりとしたテンポの粋調(すいちょう)のお囃子」を特徴とすること、酔狂連は「県下一の大きさを誇るヒョウタン型の高張りちょうちん」を先頭に立てることなどが、各連自身の言葉で書かれています。

    同じ「阿波おどり」という名前で括られていても、聴こえてくるテンポも、うちわのさばき方も、連ごとに違う。その違いを聴き分けられるようになったら、あなたはもう阿波おどりを楽しめています。

  • 阿波おどりとは — 400年の歴史と、いま

    夏の徳島に、100万人が集まる

    毎年八月、徳島市の中心部は一年でいちばんにぎやかな数日を迎えます。徳島市のホームページによれば、阿波おどりは「400年を超える歴史を持つといわれる、徳島が世界に誇る伝統芸能」で、本場・徳島市には国内外から100万人を超える観光客が訪れます。開催期間は毎年8月11日から15日まで。東京の高円寺、埼玉の南越谷など、いまでは全国各地で阿波おどりが開かれていますが、その源流はこの街にあります。

    踊り子は「連(れん)」と呼ばれるチームを組んで踊ります。三味線や太鼓などの伴奏を担う人たちも連の一員で、この楽器隊を「鳴り物(なりもの)」と呼びます。徳島県のホームページは、連の総数は1,000を超えると記しています。

    これから見に行くという方に向けて、この祭りがどこから来て、いま何が起きているのかを整理してみます。

    起源には、まだ定説がありません

    阿波おどりの起源は、実ははっきりしていません。徳島県のホームページは、次の三つの説を並べて紹介しています。

    築城起源説は、天正15年(1587年)に蜂須賀家政(はちすか いえまさ)によって徳島城が落成した際、その祝賀行事として城下の人々が踊ったのが始まり、という説です。蜂須賀家政は徳島藩の藩祖にあたる武将です。

    風流おどり起源説は、寛文3年(1663年)の『三好記』にある、天正6年(1578年)に十河存保(そごう まさやす)が勝瑞城(しょうずいじょう)で風流おどりを開催したという記録をもとに、これが阿波おどりの原型だとする説です。

    盆おどり起源説は、もとは先祖を迎える盆踊りだった、という説です。

    どれが正しいのでしょうか。ここは正直に書いておきます。もっとも有名な築城起源説について、観光庁のホームページは、「この説を裏付ける史料は残っていません」とはっきり記しています。同じページには、盆踊りに起源を求める研究者もいる、とも書かれています。

    つまり、「400年前に殿様の祝いから始まった」というよく聞く物語は、確かな史料に支えられた歴史というより、長く語り継がれてきた伝承として受け取るのが正確です。この曖昧さ自体が、庶民の踊りとして続いてきた祭りらしいところでもあります。

    江戸時代 — 取り締まられ、藍に支えられた

    一方で、江戸時代の記録ははっきり残っています。観光庁のホームページによれば、1671年に踊りを取り締まるための規則が出されました。内容は次の三か条です。

    1. 踊れる期間は3日間のみ
    2. 武士は参加を許可しない
    3. 寺の敷地で踊ることは禁止する

    わざわざ規則を出すということは、それだけ盛り上がっていたということでもあります。観光庁のホームページには、藩当局が「住民が特定の近隣地域でのみ踊ることができるように厳しい規制を課しました」とあり、さらに興味深いことに、街頭に集まって踊るため警察署の許可を得る必要があり、その状況は現在でも続いていると書かれています。

    そしてこの祭りを経済的に支えたのが「阿波藍(あわあい)」でした。徳島県のホームページは、盛んに踊られるようになったのは藍や塩で富が蓄積された頃からで、藍商人が活躍し、年を重ねるごとに阿波おどりを豪華にしていった、と説明しています。文化庁の日本遺産「藍のふるさと 阿波」(2019年認定)にも、阿波おどりは構成文化財のひとつとして含まれています。

    その藍は、20世紀初頭、海外からの安価な合成染料の輸入によって衰退していきます。祭りを支えていた財布が細ったのです。

    「阿波おどり」という呼び名は、意外と新しい

    では「阿波おどり」という名前はいつから使われているのでしょうか。

    観光庁のホームページによれば、1928年に徳島商工会議所が踊りの協賛を始め、観光地として急速に成長しました。この頃から「盆踊り」に代わって「阿波踊り」という言葉が使われるようになり、1946年に「阿波踊り」という名称が正式なものとなったとされています。「阿波」は徳島県の旧称です。

    観光庁のホームページの別のページでは、「祭りのルーツは400年以上前に遡りますが、徳島が戦前の昭和時代(1926年〜1945年)に観光客への宣伝を始めたときに『阿波おどり』という名前が付けられました」と、より端的に書かれています。

    つまり、踊りそのものは古くても、いま私たちが使っている「阿波おどり」という呼称は、昭和に入ってからの観光振興のなかで広まったものだということになります。400年の歴史と、100年に満たない呼び名。この二重構造は、知っておくと祭りの見え方が少し変わります。

    なお1931年には、芸者で歌手の多田小餘綾(ただ こゆるぎ、1907〜2008年)が「阿波よしこの」をヒットさせ、阿波おどりの普及に貢献したと観光庁のホームページは記しています。

    戦後 — 中断、復活、そして世界へ

    第二次世界大戦の直前と戦時中、祭りは開催されませんでした。再開は1946年(昭和21年)です。

    戦後の大きな転機は1970年の大阪万博でした。ここで初めて海外の観客に広く見られるようになり、海外公演を行う連も現れます。観光庁のホームページは、万博が踊りそのものの変化のきっかけにもなったと述べています。出演者が観客を積極的に踊りの楽しさに引き込もうとした結果、阿波おどりはより洗練されたスタイルへ発展していった、という説明です。

    もうひとつ、意外と新しい要素があります。大人数が一斉に踊る「総踊り(そうおどり)」です。阿波おどり振興協会のホームページによれば、1,700人以上が一斉に踊り、阿波おどりの代名詞ともなっているこの総踊りは、昭和47年(1972年)に同協会が考案したものです。伝統の象徴のように見える光景が、実は50年ほど前に生まれた演出なのです。

    子どもの参加も同様で、観光庁のホームページは「子どもたちは1970年代から、阿波おどりに参加し、大人と一緒に踊りを披露してきました」としています。

    いま — 「阿波おどり未来へつなぐ実行委員会」の体制へ

    現在の徳島市の阿波おどりは、2022年(令和4年)4月に発足した「阿波おどり未来へつなぐ実行委員会」が運営しています。徳島市のホームページによれば、設立総会は2022年4月8日に徳島市シビックセンターで開かれました。実行委員会のホームページでは、開催スケジュールやチケット情報のほか、会議資料も公開されています。

    いま見に行く阿波おどりは、400年といわれる伝承と、100年の観光の歴史の上に立っています。そう思って眺めると、目の前で跳ねている踊り子の一歩が、少し違って見えるかもしれません。